SNSで芸人のキャリアを開拓。おばたのお兄さんが語る、バズるよりもっと大切なこと

クリエイターが集まるプラットフォーム「SUZURI(スズリ)」では、さまざまな創作でご活躍中の著名人に「表現をすること」について伺うインタビューをお届けします。

今回のゲストはお笑い芸人のおばたのお兄さんです。小栗旬さんのモノマネでブレイクし、現在は自身のYouTubeチャンネルでジブリ作品のパロディや小学生に扮するネタを再現する動画をアップし続けているおばたさん。SNSで作品を発信する際のコツや、継続の力について伺いました。

<おばたのお兄さん>
新潟県魚沼市出身。吉本興業所属。2016年におばたのお兄さんとして活動を開始。2017年に出演した「爆笑そっくりものまね紅白歌合戦スペシャル」で小栗旬のモノマネで注目を集めた。この春、舞台化された「千と千尋の神隠し」では青蛙役を演じた。魚沼をPRする「魚沼特使」でもある。

おばたのお兄さんのYoutubeチャンネル:おばたのお兄さんといっしょ
おばたのお兄さんのInstagram:おばたのお兄さん (@bataninmari)
おばたのお兄さんのTwitter:おばたのお兄さん (@hinode_obt)

幼少期から周囲への気配りを意識

――おばたさんは、撮影のためにご自身で新潟までヘアメイクを呼んだり、撮影許諾を取ったりしていますよね。芸人として表に出る仕事が多い中で、裏方の業務を人に任せず、ご自身で行う理由は?

おばた:単純に、人に頼んでいたら仕事が遅くなるからです(笑)。僕は地元である新潟県魚沼市の特使をやっていて、新潟で撮影することも多いんです。撮影で県の人にお願いする場合に、マネージャーよりも僕から頼む方が力になってもらえる。それに、地元の方とのつながりも大切にできますよね。

他にも、おもてなしの精神が強くて。例えば他の人にケータリング頼んで、適当なものを持って来られるとイライラしちゃう(笑)。だから、お弁当の手配も自分でやるんです。現場では「どうしたら相手が気持ちよく過ごしてくれるのか?」を第一優先で考えていますし、人のために何かしてあげることが好きなんです。

――昔から周囲に気を配る性格だったんでしょうか。

おばた:この間、その片鱗を見せたエピソードを母親から聞いたんですよ。僕が通っていた保育園に妹が入園、妹が僕から離れなくて。「僕は友達と遊びたいけど、妹をどうしよう……」って悩んだ結果、「自分はステージで友達とごっご遊びするけど、妹は特等席で見てて」ってその場を仕切ったんです。

それを見た先生が「自分のやりたいことと、他人への気づかいのバランスをとって偉い。この子は将来、人前で何かをする子になるかもしれない」って思ったそうです。幼少期から機転が利く方だったのかなと思いますね。

視聴者側の視点に立って、前もって仕掛けを準備

――2016年のコンビ解散後、ピン芸人とやっていく中で「これは売れる」と手応えを感じたのは、いつ頃だったのでしょうか?

おばた:2017年1月に放送された「爆笑そっくりものまね紅白歌合戦スペシャル」で、小栗旬さんのモノマネをした時です。これは大きなチャンスだと思い、オンエアまでに「視聴者はCM中に僕のことを調べるだろうな」と想定して、CMのタイミングを狙ってTwitterに載せる写真や文言を投稿しました。

――前もって「おばたのお兄さんはどんな人なんだろう?」の資料をネットに放っていたんですね。

おばた:はい。5年前はTikTokもなかったし、正直、芸人の世界ではSNSって軽視されていたんです。それでも吉本の社員に「こいつ絶対に売れる」って分かってもらうためにもネットから仕掛けていきました。

――SNSを始める前に、強く意識した部分はありますか?

おばた:もし自分が洋服屋だとしたら、世間の人が「このデザインがいいな〜」と思ってお店に来ても、商品がTシャツ1枚しかなかったら、もう覗きに来てくれないと思うんですよ。なので、TikTokを始める時は「商品」である動画をたくさん並べることに徹しました。バズを狙うだけじゃなく、まずは投稿を継続しないといけないんですが、みんな途中で折れてしまう。もったいないと思います。

SNSって、見に来るお客さんを飽きさせないことが、とても重要なんです。そのための「備え」としても投稿を継続することが大切だと思います。でも、続けるためにはまず自分が好きでないとやっていられません。僕は、SNSで動画投稿をすることが好きだから続けられている。それが大きいと思います。

――それまでとは全く違う角度からのネタのアプローチをするにあたって、不安な面はありませんでしたか?

おばた:ありました。けど、クリエイターなら「自分がこの作品を一番気に入っている」って思わないと、しんどくなってきますよね。 自分自身を支えているのって、そこしかないんで。だからこそ、新しいことに挑戦する時は、「絶対にウケる!」って自信を持つようにしています。

作品への思いをストレートに出すと、ファンにも響く

――ジブリネタ、小学生あるあるなどのモノマネシリーズは、どのようにして生まれたのですか?

おばた:もともとモノマネは得意だったんですけど、「クラスの人気者ができるレベル」だと思っていました。そんな中、4月の緊急事態宣言の際に「家で何かできることはないかな?」と思って、ジブリの名シーンを再現する「スタジオおブリ・ジブリシリーズ」を発信すると、大きな反応があったんです。その時、素材としては弱かったモノマネも、ネットと掛け合わせることで活かせると気づきました。
「スタジオおブリ・ジブリシリーズ」再生リスト

――動画制作のフォーマットがある中で、オリジナリティを出すために工夫しているのはどんな部分ですか。

おばた:ジブリ動画に関しては、原作へのリスペクトを何よりも大切にしています。今「美魔女の宅急便」ってパロディ動画を撮っているんです。主人公のキキが、突然40歳の美魔女になるって話です(笑)。大切なセリフはほぼ原作通りにしているんですけど、ひねりをつけるために、作品の中に無理やりバク宙を入れています(笑)。

――(笑)。原作をリスペクトしているからこそ、本家やジブリファンにも刺さるパロディになるんですよね。

おばた:やっぱり作品のことが本当に好きじゃないと、ファンにはバレますよね。それに「好き」って思いをストレートに出すと、ファンに響くんです。ジブリシリーズで共感を得られたのは、オタクならではの切り取り方だったからこそだと思います。

――ちなみに……「ファン層の広いディズニーのパロディをがんばろう!」とは思いませんでしたか?

おばた:めっちゃ思いました(笑)。でも、僕はディズニーも大好きなんですけど、やっぱりジブリほどではなくて。ディズニーのパロディを中心にやったとしても、結局切り取る場所で「この人、好きじゃないんだな」ってバレると思います。やっぱり好きなことしか突き詰められないんですよね。

――ネタを試行錯誤していく中で、「この路線でいいんだっけ?」って葛藤はありませんでしたか?

おばた:正直、今でもあります(笑)。自分はネタを真剣に突き詰めた芸人ではなく、SNSでポーンと売れたので、吉本の中でも「少し肩身が狭いな」と思う時がありました。だけど以前、千原ジュニアさんから「向いていることをやった方が絶対にいい」って言ってもらえて。この言葉通り、自分の長所を思いっきり伸ばしていこうと思います。

バズっているものを「教科書」として活用する

――お笑い芸人のお仕事以外に、ミュージカル出演やスポーツインストラクターとして活躍されていますが、今一番おばたさんが夢中になっているお仕事ってなんでしょう?

おばた:どの仕事も楽しくて、一番は決められません。ファンの方から「どこを目指しているんですか?」って意見をいただいたことがあるんですけど、「そう思われるくらい、自分は色んなことやれているんだ」って思いました。僕は飽き性なんですけど、お笑いの世界は掛け合わせなので、それでも成立するところが面白いですよね。

――クリエイターが表現し続けるために、一番大切なことってなんだと思いますか?

おばた:考え方の部分で言うと、「現状維持は後退へとつながる」と思っています。「これでいいや」はダメ。僕も進化し続けるために、新しい動画のアイデアを考えたり、ありふれたものを違う角度から見たりしています。

他にも、世の中でバズっているものを「教科書」として参考にすること。例えば「動画を投稿するのは21時くらいがベスト」というルールは、人の生活リズムから見ても今後も変わることはありませんよね。成功事例をたくさん見て、基礎を学ぶことも必要だと思います。

――最後に、おばたさんの今後の目標を教えてください。

おばた:スポーツと歌うことが好きなので、それを絡めて「たいそうのお兄さん」のような存在になりたいです。あとは、大好きな地元にもっと貢献したい。夢のひとつが「おばたのお兄さんカップ」って名前がついたスポーツ大会を開催することなんですよ。そのためにも、もっと売れたいなって思います。

<聞き手・編集 小沢あやピース株式会社)>
<構成 吉野舞
<撮影 小原聡太

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