「ピアノバカになっちゃダメ」の一言で人生変わった。ハラミちゃんが語る、経験がつくる音

クリエイターが集まるプラットフォーム「SUZURI(スズリ)」では、さまざまな創作でご活躍中の著名人に「表現をすること」について伺うインタビューをお届けします。

今回のゲストは、YouTubeで活躍するピアニスト・ハラミちゃん。会社員として勤めていた2019年に都庁のストリートピアノで「前前前世」を演奏する動画を投稿し、瞬く間に多くの人を魅了していきました。クラシックの世界でストイックに鍛錬を重ねてきた彼女が、今、楽しさを追求する理由、今後挑戦したい表現などについて伺いました。

<ハラミちゃん>
YouTubeを中心に活動するポップスピアニスト。2019年6月から「ハラミちゃん」として本格始動。「ピアノを身近な存在にする」を目標に掲げている。YouTubeのチャンネル登録者数200万人、動画総再生数5億回以上。絶対音感、即興演奏などの特技を活かし、東京都庁や京都駅、仙台空港など、 各地のストリートピアノ動画を投稿している。

ハラミちゃんのホームページ:https://harami-piano.com/
ハラミちゃんのTwitter:https://twitter.com/harami_piano
ハラミちゃんのInstagram:https://www.instagram.com/harami_piano/
ハラミちゃんのTikTok:https://www.tiktok.com/@haramipiano

調律師さんに「ピアノバカになっちゃダメだよ」って言われて

――「前前前世」を演奏した時、ハラミちゃんはIT企業に勤めていて気持ち的に塞ぎこんでいた時期だったそうですね。当時はどんな心境で動画をアップされたのでしょう?

ハラミちゃん:会社の先輩だった現マネージャーが、私をストリートピアノに連れ出してくれて演奏したんです。けど、100箇所くらいミスって「この動画は絶対アップできない」と思っていました(笑)。でも、マネージャーは「何をミスって、なんで動画をあげられないのかわからない。楽しそうだったし、良かったよ」と言ってくれて。まあ、誰にも見られないだろうと思ってYouTubeに動画をアップしたら、すごく再生されたんですよね。すごくびっくりしました。

――ハラミちゃん的には、見られないと思ってアップしたにも関わらず。

ハラミちゃん:そうなんです。私が気にしていた細かい一音の正確さよりも、全体の楽しそうな空気や、耳コピすごい!みたいなことのほうが興味を持ってもらえたんです。それに気づいたので、「一音にこだわりつつも、ミスに対する抵抗感をなくして、楽しめたらそれでOK!」という世界を作っちゃおうと思って。己のプライドばかりを優先してしまうと、自分自身で「ピアノを身近にしたい」と言っているのに、それができないと思ったんです。

——ピアニストって1曲を何年もかけて練習し続けて、磨き上げていって披露する、というイメージがあるのですが、ある種、対極にある意識ですよね。

ハラミちゃん:私も子どもの頃はひたすら練習にだけ時間を費やしていました。でも、小学3、4年くらいの時に家に来てくれたピアノの調律師さんに「ピアノバカになっちゃダメだよ」って言われたのをすごく覚えています。恋愛や部活、いろんな経験をするとそれをピアノに取り入れられるし、音に張りが出るよ、と。私は1秒でも長く練習したほうがいいじゃんって思っていたから、その時は理解できないでいたんです。気づきがあったのは大学時代でした。

——大学時代のハラミちゃんに、何が起こったんでしょう?

ハラミちゃん:私はそれまでポケモンもディズニーも見たことないし、友達とも遊ばずにピアノばっかりやっていったんです。けど、大学の同級生たちは、私よりはるかにいろんなことを経験して、青春していたことがわかって、世間とのズレをすごく感じたんですね。

そこから時間を取り戻すように、大学4年間は週6くらいで友達と遊びました(笑)。遊びまくってピアノ以外の経験をたくさんした結果、上手い下手関係なく、感情をそのまま表現してシェアすること、「これがエモいってことか!」という感覚を初めて知ったんです。これもひとつの勉強だなと体感したし、ピアノ以外のこともいろいろ経験してみようと思うようになって。

インプットがある音楽とない音楽って全然違うんだと知った

——ピアノ以外のインプットの必要性に気づかれたんですね。

ハラミちゃん:元をたどれば「曲って単なる音の並びじゃないんだ」ということを初めて体感したのは、小学校1、2年生くらいの時。何を表現したいのか、その時はまだ理解できてなかったのですが、平吉毅州さんという作曲家のピアノ曲名が「バレリーナの悲しみ」とか「チューリップのラインダンス」とか、表現したいものがタイトルや音とすごく繋がっていたんです。

ただ、「バレリーナの悲しみ」は、なんでバレリーナが悲しんでいるのかわからなくて。踊りを失敗しちゃったのかな?とか、足を怪我しちゃったのかな?とか思っていたんですけど、バレエを習っていた友達が、「私はなんで悲しんでいるのかわかる」って言ってたんですよ。バレリーナは食事などの厳しい制限のなかではんぱじゃない練習量をこなさないといけないし、そうしてまで背負わないといけないものがある。だから、その孤独感や悲しみを表現しているんだと思う、と。

――まさに経験しているからこそ理解できることですね。

ハラミちゃん:そうなんです。「足を怪我しちゃったのかな?」くらいで弾く「バレリーナの悲しみ」と、バレエについてしっかり知って弾く「バレリーナの悲しみ」だったら、技術関係なく、後者のほうが曲として豊かだなと思ったんです。

そのあたりから、インプットがある音楽とない音楽って全然違うんだと知っていきました。もちろん誰がどう弾くかは自由だけど、私はやっぱり自分自身の感情や感覚とリンクする曲のほうが豊かだと思っています。だから、いろんなことを知ったり、受け入れて、心のなかに入れていくのはすごく大事。インプットの時間もひとつの練習だと捉えていました。

ピアノは誰かの思い出や心に寄り添う手段

――オリジナル曲も積極的に作られていますが、クラシック曲を演奏したりポップスをカバーするのとはまた別の感覚ですか?

ハラミちゃん:そうですね。作曲は自分の心のなかを覗くツールみたいな感じです。制約がなく、ゼロから始めるぶん、まとめるのが難しいですね。コンセプトとか何も考えずに一旦指を動かすと、だんだん雨っぽくなったり、桜っぽくなったり。それで「あ、そういえば最近こういう景色を見たな」って思い出したりする。心のなかに今何が残っているのかをあぶり出している感覚なんです。

――身体に語らせるというか。

ハラミちゃん:そうです、そうです! 周りの方にデモを聞かせると「長い」って言われることが多くて(笑)。私の性格的に盛り盛りにしちゃうというか。良く言えばサービス精神旺盛、悪く言えば加減を知らずにまとまらない。でも、一旦自分にわがままになって思う存分1曲作ることを大事にしています。

――じゃあ、周りの意見を聞いて、そこから引き算していくんですね。自分で入れたくて盛り盛りにしているわけですから、引き算する時、心苦しくならないですか?

ハラミちゃん:なるんですけど、他の人の意見を聞いて、改めて曲を聴いてみると、「たしかに!」って納得することが多いです。自分でもどうしたものか、と思っているんですが、本当に私、自分の意思がなくて。もちろん私自身が弾きたいなと思うものはあるのですが、求められることを100%やりたいタイプなんですよ。

人に聴いてもらうために活動しているということが根底にありすぎて、誰も求めてないけど自分が弾きたいから弾こうという思考に一切ならない。誰かの思い出や心に寄り添いたいし、ピアノはそのための手段だと思っています。

ちょっとした豆知識や発見があるだけで音楽の楽しさが増す

――ストリートでリクエストをくれるお客さんや、「お米さん」と呼ばれるファンがいるからハラミちゃんが表現できるし、ハラミちゃんが表現するから、お客さんたちが楽しめる。良いコミュニケーションが循環しているんですね。

ハラミちゃん:基本的に音源ってアーティスト発信でリリースされますけど、私の場合、ストリートピアノでリクエストをもらったものを音源化しているので、一番最初の発信元はお客さんなんですよ。スターダストレビューさんの“木蘭の涙”も、ある女の子が亡くなったお母さんが好きだった曲だとリクエストしてくれたもの。だから作品を作っているというより、みんなからもらった思い出をCDに詰め込んで、プレゼントのように渡している感覚です。

――ずっとポジティブに「お米さん」たちとコミュニケーションを取り続けて、明るい表現をしていけるのはなぜですか?

ハラミちゃん:私自身、自分の好きな人がネガティブなことや愚痴ばっかりTwitterとかで言っていたら、すっと引いちゃうというか。シンプルにお米さんたちをその感覚にさせられないと思っていますし、応援したいと思ってもらえるような存在でいたいんです。だから、自分のワガママな感情は仕舞う、というより、身内に出そうと思って(笑)。結局、身内に出せないと公に言いたくなるんだなと気づいたんです。

――ハラミちゃんのそういう意識があるからこそ、「お米さん」たちとの信頼関係が築けているのだと思います。「お米さん」というファンネームがあるのもいいですよね。

ハラミちゃん:「お米さん」というファンネームはめちゃくちゃ初期に考えて。まさかグッズを作るなんて思わず(笑)。ウサミちゃんやお肉など、キャッチーなモチーフがあるので、ものすごく戦略を練ったと思われがちなんですけど、実はまったく練ってないんです。全部活動初期に必要に迫られてバッと作ったものだし、奇跡が重なり合って今グッズになっているので、勢いって大事ですね。

――ちなみに、SUZURIは使ったことはありますか?

ハラミちゃん:このスマホケースもSUZURIで買いました! むにゅさんっていう作家さんのものなんですけど、むにゅさんのグッズは大量買いしてます。みんながまだあまり持っていないものが好きなので、まだ知られていない作家さんと出会えて楽しいですよね。そのなかでお気に入りのクリエイターさんを探すのも好き。そういう方を知っているとちょっと嬉しいじゃないですか(笑)。

むにゅ「プクーズおもちゃばこ(バニラ)」3,223円(税込)

――これから、ハラミちゃんはどんな表現をしていきたいですか?

ハラミちゃん:最近いちばん興味があるのは、教育分野。音楽を「学ぶ」というとすごく堅い感じがしますけど、そういうことではなくて、ちょっとした豆知識や「へえ〜!」という発見があるだけで楽しさが増すから、そういう感覚を教えていきたいです。あと、親しみやすいピアニストとして活動するのに加えて、子どもへのピアノレッスンなど実働的に教えることもしていきたいなと思っています。

<編集 小沢あやピース株式会社)>
<構成 飯嶋藍子
<撮影 小原聡太

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