第三話ー色々な自分を魅せるー 枠を飛び越え、届け続ける interviewed 岡村芳樹


クリエイターさんにお会いし、その経験や想いをキリトリ「つくる」ヒントをいただくインタビューコンテンツ。ゲストは、一目見ると世界観に引き込まれる油絵画家の岡村芳樹さん。

第三話では、SNSをはじめとする“自分の声と他人の声の向き合い方”について、さらに深くお話を伺います。


<岡村芳樹 さん>

東京都出身。武蔵野美術大学油画科油画コース卒業。独自に編み出した技法による、鮮やかで力強い油絵アートが注目を集める新進気鋭の画家。ギャラリーでの展示や文具メーカーとのコラボレーションなど、多面的な表現活動を国内外で展開中。アートをより身近に感じてほしいという思いから、SNSでの発信や手に取りやすいアート作品づくりにも力を注いでいる。



SNSは、岡村さんにとってどのような役割ですか?

「SNSは、多くの方が僕の絵を見てくださる場所だと思っています。

『なんとなくきれいだな』と感じてもらうことも、現代の作家として大切だと感じていて。僕の絵を実際に見るよりも、SNS上でのみ見る人のほうが多いのは事実。だからこそ僕の絵は、油絵の具の力を借りて、なめらかさやゴツゴツ感、つややかさなど、さまざまな質感を表現しています。

まずはSNSを通じて、その質感や世界観を感じ取っていただければうれしいです。」





アートに触れる体験を発信されているんですね

「日本の美術教育は、良くも悪くも図工に寄っていて、美術の歴史に触れる機会が少ないと思います。

でも見方によれば、美術の知識があらかじめ刷り込まれていないからこそ、みんなフレキシブルにアートを見れるんじゃないかな?とも思ったんです。だから『こういうものがあるんですよ!』って発信できることはとてもたのしいです!」



SNSの反応を気にされる方は多いと思います。ご自身の表現したいものと、喜んでもらえるもの、そのバランスはどう取っていますか?

「僕は、SNSでとても反応がよかった作品が生まれたときに、『この絵でいこう』と思えたんです。意識を外側に向けて『人から見た自分はこう見えてるんだな!』と感じとることも、大切にしています。



ただ、SNSを意識した表現にすると、どうしても似通ったものが生まれるとも思いました。

たくさんの自分をお見せする中で、見られるものと見られないものがあっていいと思っています。

素直な気持ちで受け取りながら、自分にできる限りの作品数を描く。とにかく多く試してみる。そこにまた反応をいただくことで、自分の良さを客観的に捉え、今につなげてきました。」





日本のみなさんへのアートを大切にしながら、海外への挑戦も視野に入れられていますか?

「最近は中国に行かせていただく機会が増えてきました。皆さんとてもエネルギッシュで、困っている人がいればすぐに助けるなど、スピード感や人との距離感が日本とはまったく違って、とてもおもしろいと感じています。



今後はもっと海外に出て、その土地の人たちが何を美しいと感じるかを肌で感じながら学び、絵に生かしていきたいと思っています。

アメリカやヨーロッパにも足を運び、それぞれの文化や価値観に触れることで、自分の表現をより広げていけたらと考えています。」


今後、挑戦してみたいことはありますか?

「今は、油絵に加えて刺繍作品に挑戦しています。きっかけは、タジマ工業株式会社さまからお声がけいただいたことで、新たなプロジェクトが始まりました。

油絵は、美しさや強い存在感が魅力である一方で、保管方法の難しさや、経年劣化を不安に感じる方もいらっしゃいます。


タジマ工業機械の刺繍アートブランド「&T」とのコラボレーション作品


実は日本では、昭和の中期頃までは縫製工場や刺繍の職人が多く、刺繍で美しい絵をつくることは珍しいことではなかったそうです。刺繍作品は、経年劣化にも強いという利点があります。

だからこそ刺繍なら、自分の絵が時を越えそばにあり続けるかも、そんな新しい形を届けられるのではと思い、取り組みを始めました。」


お客さまに届けたいという思いから、さまざまな手法に挑戦されている熱意が伝わってきます。

「外側から自分を壊して、内側にある自分を追い求めていく、そんな試みを続けています。様々な出会いを通じて、自分の絵がどのような広がりを見せるのか、その変化や展開を、自分自身がとても楽しみなんです。」





最後に、これから表現を続けていきたい方へのメッセージをお願いします。

「僕がここまで進んでこれたのは、自分を見つめる力をとても大事にしてきたからだと思います。『自分が正しいと感じたこと』を軸に制作を続けること。それが、夢を叶えていくスピード感にもつながりました。

逆に、心から大切だと感じられない意見には、少し距離をおいてもいいのかもしれません。

正しさは星の数だけあるからこそ、自分自身の中にある“エンジン”を信じ続けていいと思います。そのエンジンを冷ましてしまうような言葉には、耳をふさぐ力も必要だと思っています。

そして、『自分が正しいと感じたこと』は、きっと自分と似た誰かにとっても正しいと思ってもらえるはず。他人の意見を鵜呑みにしすぎず、自分としっかり向き合い、自分らしさをとことん煮詰めること。

そうやって生まれた僕の絵は、僕の想像をはるかに超える場所まで連れていってくれました。」


岡村さんのお気に入り「MAIMERI パレットナイフ」


あとがき:

三話にわたってお届けしてきた、岡村さんの日々や想い。強さが宿り、やさしさやあたたかさが滲んでいる、岡村さんの絵のようなインタビュー時間でした。第一話でお話した「数の先に、個性がある」という言葉。覚悟のいる厳しさも、可能性を見出すやさしさも備わっている岡本さんらしい言葉です。

日本国外へも可能性を広げる岡村さんは、より多くの人々の日々を彩っていくんだな、そんなしあわせな未来が描けるインタビューでした。






最後に:

本コンテンツ「キリトリセン」は、今回をもって最終回となります。
キリトリセンをご覧いただいき、誠にありがとうございました。

これまでご登場いただいたクリエイターの皆さまには、心からの感謝を申し上げます。言葉を通して届けてくださった想いや経験、哲学は、きっと多くの方の心と今に届いたことと思います。

そして、読んでくださった皆さまへ。
ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
ひとつひとつの対話が、読んでくださったあなたの何かの“きっかけ”となっていたら、これ以上の喜びはありません。

今、夢、自分、他人、過去、未来にひそむ私が輝く可能性の星。

点と点がつながると自分の道が現れて、てんてんてんと伸びてゆき、自由な世界をキリヒラク。
そう信じて、これからもSUZURIも進み続けます。

また、新たなカタチで“きっかけ”をお届けできることを楽しみにしています。

SUZURIスタッフ 一同



Written by : EandY
Photo by : junjun


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