クリエイターさんにお会いし、その経験や想いをキリトリ「つくる」ヒントをいただくインタビューコンテンツ。ゲストは、一目見ると世界観に引き込まれる油絵画家の岡村芳樹さん。全三話でお届けいたします。
第二話では、自分らしさを確立しながらも、お客さまの想いに寄り添って描く作品についてお話を伺いました。
<岡村芳樹 さん>
東京都出身。武蔵野美術大学油画科油画コース卒業。独自に編み出した技法による、鮮やかで力強い油絵アートが注目を集める新進気鋭の画家。ギャラリーでの展示や文具メーカーとのコラボレーションなど、多面的な表現活動を国内外で展開中。アートをより身近に感じてほしいという思いから、SNSでの発信や手に取りやすいアート作品づくりにも力を注いでいる。

SUZURIを使い始めたきっかけは何ですか?
「SUZURIさんは、サービスが使いやすいと感じて始めました。いろんなタイプのお客さまと出会えるのも魅力だなと思います。
日本って、絵を飾る文化があまり根付いていない国だと思うんです。
そんな中で、『もっと自分の絵を見てもらいたい』『もっと身近に楽しんでもらいたい』と考えたときに選んだのが、スマートフォンケースでした。
お客さまが手に取りやすいものをつくりたい! それに、今の時代は『自分でやれる』ことが大事だと思っていたので、自分で商品化して、自分で販売できる環境がある、そんなSUZURIはとても魅力的でした。」


ご自身の作品と、それを手に取るお客さまの生活もイメージして制作されているんですね。
「そうですね。例えば、日本の家庭でも飾りやすいように、18cm四方のサイズで作品をつくっています。
日本の暮らしを考えたときに、大きさや価格、飾り方、そして日本人特有の美意識もふまえ、絵を楽しんでいただけるように描いています。」
岡村さんは、展示会に訪れたお客さまと30分以上話し込むことも珍しくないそうです。それほど丁寧に向き合う時間を大切にされています。

お客さまの生活シーンにまで思考をめぐらせ、「自分の絵が、日常にどんな彩りを加えられるか」に向き合い、絵を楽しんでいただくにはただ“飾る”だけじゃない、と身近なアイテムにアートを施されました。
飾るうえでは、日本の建築様式に着目し、キャンバスのサイズを小さくすることで、暮らしの中に取り入れやすい作品に。その小さな枠の中には、心躍る鮮やかな世界が広がっています。

その視野の広い考え方は、どこで培われたのですか?
「特にどこかで学んだわけではないのですが、学生時代の経験が大きいかもしれません。狭い寮でTシャツを作って販売していたんです。
そのとき、後輩に営業を任せて外に出てもらったら売り上げがすごく伸びて。その経験が活かされていると思います。」
作品を作っていく上で、生みの苦しみはありますか?
「自分はできることが少ないんです。集中力も本当に続かなくて。
だから、2〜3時間ででき上がるものがいいなと思い『じゃあドローイングがいい!』と、自分に合う方法を選んできました。
苦しくないほうが、長く続けられると思ったんです。」
様々な経験をパワーに変えられていることが、とてもすごいと感じます。
「僕は、自分の少ない経験をどう活かすか、すごく悩みました。スタートが遅かった分、正直とても焦りました。
でも、気合を入れて、やめないこと。時間というコストをどこまで投資できるか、腹をくくってから、僕の作品は良くなっていきました!

小さいキャンバスに描き始めたことも、自分の絵の美しさを整理する良いきっかけになりました。それまでは、まったく違う作品を描いていて、自分の暗さや弱さも表現していたんです。でも、小さいってかわいいじゃないですか? そのかわいさを活かすように描いてみたんです。
小さいキャンバスの上の自分の絵に向き合ったとき、“自分らしい”表現が見えてきたんです。」

あとがき:
岡村さんが「アートがお客さまの生活に馴染むまで」を丁寧に考えている姿勢には、何度も驚かされました。そこには、やさしさが詰まっていました。
岡村さんは、ご自身の意見や考えをとても明確に持っていらっしゃいました。その言葉の一つひとつから、日々感じとり、考え抜いたうえでたどり着いた思考であることが伝わってきます。
しかし、自分の考えを誰かに託すときの語り口には、強さよりもあたたかさがありました。
それはきっと、岡村さん自身が自分の声を大切にしてきたからこそ、押し付けずに後押しになるよう語ってくださったからだと思います。
次回の第三話では、SNSをはじめとする“自分の声と他人の声の向き合い方”について、さらに深くお話を伺っていきます。
Written by : EandY
Photo by : junjun