第一話 ー真っ白なところからー 力が “ない”を“ある”に変えた選択 interviewed 岡村芳樹


クリエイターさんにお会いし、その経験や想いをキリトリ「つくる」ヒントをいただくインタビューコンテンツ。ゲストは、一目見ると世界観に引き込まれる油絵画家の岡村芳樹さん。全三話でお届けいたします。

第一話では、画家として進み出す日々に込められた決意についてお話を伺いました。


<岡村芳樹 さん>

東京都出身。武蔵野美術大学油画科油画コース卒業。独自に編み出した技法による、鮮やかで力強い油絵アートが注目を集める新進気鋭の画家。ギャラリーでの展示や文具メーカーとのコラボレーションなど、多面的な表現活動を国内外で展開中。アートをより身近に感じてほしいという思いから、SNSでの発信や手に取りやすいアート作品づくりにも力を注いでいる。



画家になったきっかけを教えてください。

「最初はイラストレーターになりたかったんです。僕は、函館の中高一貫の全寮制の学校に通っていたのですが、東京に比べて夢を叶えるための情報が少なく、パソコンやタブレットも使えない環境でした。それで自然と、アナログの画材を使って描き始めたんです。そのはじまりが、結果的に画家という道につながりました。」




小さい頃から、絵に関わる仕事を目指されていたんですか?

「勉学に力を入れている学校に通っていたのですが、そこではずっと“できない子”で、劣等感がありました。だからこそ、勉強以外で自分の価値を探さなくちゃと思って、いろいろ挑戦してみました。その中で、絵が一番向いていると思ったんです。

評価されない環境だったからこそ、必死に自分を見つめて、自分の道を見つけに動きました。今振り返ると、“このまま10代が終わってしまう”という焦りや恐怖から、自分の人生がはじまったように感じます。」



岡村さんは、どんなときも“自分にできること”に挑戦されていました。自分が劣っていると否定するのではなく、自分が輝く世界を探し、進んでいくこと。それは、とても大切な考え方だと感じました。

しかし、進み出すと必ずまた壁が現れます。岡村さんは、新たな世界での壁をどう乗り越えながら歩みを進めてきたのでしょうか。





今の作風は、どのようにして生まれたのですか?

「高校在学中、東京の美術予備校に通い始めました。そこにいる生徒たちは、すでに高い技術を持っていて、とても絵が上手だったんです。それまで僕は勉強中心の環境で過ごしていたので、彼らと同じことをしていても追いつけない!と感じました。だからこそ、美術予備校でも自分の“強み”について考えたんです。

そんなとき、川村記念美術館でアメリカの美術書に載っていた絵に出会いました。

『これほどシンプルな絵も、美術として成立するんだ!』と衝撃を受けたのを覚えています。

僕はもともと色彩感覚が“強み”だと感じていたため、たくさんの色を使わず、白で中和しながら『この限られた色だけで絵を描いたらどうなるんだろう?』と試し始めました。そこから、少しずつ今の作風へとつながっていったんです。」


ご自身の強みを考え抜いた先が、今の作風なんですね。

「はい。実は、スランプを感じたことはあまりないんです。

きっと、『手を動かし続ければ、答えは見えてくる』と信じていたからだと思います。


岡村芳樹さんの個展の様子


悩んで苦しい時期もありましたが、その中で『得意なこと』『好きなこと』『感動したこと』を組み合わせて、自分らしさを少しずつ選び取っていったように思います。

人と違いが出るまで、手を動かし続ける。

僕は、“数の先に、個性がある”と信じているんです。」



あとがき:

インタビューの中で岡村さんは、「数の先に、個性がある」ことを度々語ってくださいました。つい「恵まれていないかも…」と疑いがちな“才能”や“環境”に焦点を当てるのではなく、みんなに平等に与えられた時間の中で、何度『好き』に向き合えたか、自分の限界まで挑み続けられたか。その先にこそ“自分らしい”作品が生まれることを教えてくれました。

自分らしさは、数の先にあり、挑み続けた数は、必ず自分の力になる。

「数の先に、個性がある」。これは職種や年齢を問わず、多くの方の今に光を当てる言葉だと思いました。

次回の第二話では、自分らしさを確立しながら、絵を手にとってくださるお客さまの想いにも寄り添う現代の画家として、岡村さんが大切にしていることについてお話を伺っていきます。





Written by : EandY
Photo by : junjun

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