クリエイターさんにお会いし、その経験や想いをキリトリ「つくる」ヒントをいただくインタビューコンテンツ。ゲストは、世界で愛されるキャラクター「おひげのポン」の生みの親、かなざわまことさん。全三話でお届けいたします。
第一話では、会社員からクリエイターへと進み出した日々に込められた想いについてお話を伺いました。
<かなざわまこと さん>
新潟県出身。大学院卒業後パッケージメーカーの営業職を経て、フリーランスとしてイラストレーター、キャラクターデザイナーの活動を開始。NHKの番組キャラクターや、様々な企業キャラクターを制作。オリジナルキャラクター「おひげのポン」は日本をはじめ台湾やタイなど海外での人気も高く、さまざまな企業とのコラボグッズが販売されるなど、国内外での活動を展開。著書に絵本「おひげのポン」「おひげのポンといじわるガハハ」(学研)等がある。
クリエイターになることは、小さい頃からの夢でしたか?
「僕、学校の先生になりたかったんです。免許ももってて。校長先生の免許もとって!
よーし!今から先生になるぞ!って実習に行った学校が、まさかのヤンキー学校だったんですよね。
こりゃあ、やばいってなりました。配った紙が紙飛行機でかえってきたりね。何も言えなくって。こうやって折るともっと飛ぶよ?とかくらい?
先生の道、あきらめました!」
スタッフ全員がびっくりして大笑い!そんな予想外なお話からはじまりました。
「でもやっぱり、人と話すこと、人とつくることが好きだったから営業という仕事を選んだんです。」
小さい頃からの夢を断念しても、好きなことにつながる選択をしたかなざわさん。先生になりたかったことや、営業職を選ばれたことをお聞きして“クリエイター かなざわまこと”のつくるキャラクターたちが、多くの人を笑顔に導く訳が少しわかったように思います。
今に至るまで、様々な大きな選択をされてきたその日々に、込められた想いや経験を第一話でお伺いしていきます。

会社を辞めてクリエイターの道を目指すと決めたとき、きっかけはありましたか?
「営業職を続けて、ずっとスーツを着て髪型もぴしっとしていました。でも、どこかでずっと絵を描きたい気持ちはあって。自分には難しいだろうなって勝手に決めつけていたんです。営業先の帰りはいつも本屋さんに寄って絵本を眺めていました。
だからクリエイターを目指そうか悩む方々の不安、すごくわかります。」
そう話されるかなざわさんの表情は、当時の自分をやさしく見つめるようでした。

「気持ちにずっと蓋をしたままだったんです。僕の時代にはSUZURIみたいなサイトもないし。でも学生時代の友達の活躍や、SNSの普及もあって、やらなくちゃ後悔するよなあと思い始めました。
そんなとき、仲の良かった友達が突然亡くなってしまったんです。
その友達のお母さんが、お葬式のときに僕たちに伝えてくれました。
『あの子の生きたかった毎日を、みなさんは生きていますか?』と。
どんっと殴られたような衝撃でした。「僕はいまを生きられてない。本当に好きなことをやろう。」と思いました。そして31歳のときに思い切って会社を辞めました。」
かなざわさんはインタビュー中に2回、とても軽やかに決して暗いトーンではなく「いつまで生きられるかわからないですしねっ!」と伝えてくれました。これまでにも聞いたことがあるその言葉は、この日はじめて私たちの胸に突き刺さったように思います。それほど、ずっと気持ちにのしかかっていた重い蓋を開くかなざわさんの決心が伝わってきました。

一歩踏みだすのは怖くなかったですか?
しばらくはバイトと制作の日々が続きましたが、自分の人生を生きてる実感が湧き、すべてが自分ごとになり、毎日ワクワク楽しく充実していたことを覚えています。
クリエイター仲間が言っていた『嫌々仕事をするのと、好きな仕事にするなら、好きな仕事をした方が、絶対に経済的にも精神的にも豊かな人生が送れるに決まっていると思うんだよ』って言葉が今でも私の心に残っています。」
「ごもっともだ」とこのとき全員が深く頷きました。

「何かを成すのに一番大事なのは、まず覚悟を決めるということを学びました。たくさんの友人、先輩や後輩、そして僕自身を見てきても、やはり覚悟を決めた瞬間から人生が動き出しているように感じています。当時勤めていた会社を辞める時、僕は覚悟を決めるために『将来この人生でやりたいことリスト』を紙に書きました。あれから12年経ち、少しずつではありますが、その時に書いた夢や目標が叶い始めています。 決めたら、成る。書いたら、叶う。そう信じることにしています。」
かなざわさんのお話を聞いていると”覚悟”は進む原動力にも、夢をまっすぐ指すコンパスにもなるのかも、そう感じました。
そして、かなざわさんはくしゃっと笑いながら
「今では、当時覚悟を決めた自分に感謝しています!
31歳のまことくんよく決断した!って褒めてあげたいです!」と。
この時わたしたちも心の中で、31歳のかなざわさんに拍手喝采を盛大に送っていました!

今や世界で愛される「おひげのポン」ちゃんですが、仕事につなげていくうえでのアドバイスはありますか?
「フリーランスになってすぐは、早く何者かになりたい気持ちが強く、とても焦っていました。雑貨屋さんのステーショナリーグッズやぬいぐるみのタグを見てメーカーさんを確認し、試作品をつくって売り込む。当時1年で64社にアプローチをしたのを覚えています! でも、全然お仕事につながらなかったんです。今では、誰も知らないキャラクターをグッズ化できないことは理解できるのですが、当時は すごく凹みました…。」
自身の作品を64社に断られたことを想像すると、目の前は不安一色となり先が見えなくなりそうです。それでも、かなざわさんは
「これ以上本当に動けないのかな、やりようないのかな?って考え、売り込み時にたくさん作ったグッズもあったので、それを持ってデザフェス(デザインフェスタ)に出展してみることにしたんです。
そうしたらお客様が、グッズを買ってくださったんです! ポンちゃんを初めて見るお客様たちが目をキラキラさせて『すごくかわいぃぃ!』って言いながら実際にご購入してくださったりして。今でも鳥肌立っちゃう!
その時に、企業様に作って売ってもらうのではなくて、自分で直接お客様に届ける方法があるんだ!ってことを学びました!そしてそれは僕の性格に合っていて、何より、お客様に直接届けて直接感想をいただけるのがすごく楽しかったんです。」
自分に合う販売方法を見つけてからは、ずっと直接のコミュニケーションを大切にされているそう。
「それからは出れるイベントに出れるだけ出ました。初年度は15回! 今では年間20~30回くらいイベントに参加してきました。」



(画像 : 上)イベントへ向かうかなざわさん
(画像 : 中)デザインフェスタに参加する様子
(画像 : 下)タイのイベント「pinkoi Market in Bangkok 2020」に参加
人と話すのがもともと好きだと語るかなざわさん。今でも多くのイベントへの露出を叶えられていることに一同驚きました。
「イベントに出展すると、どういう商品や作品がお客様に喜んでいただけるかを肌で感じられ、もっと応えたい!もっと喜んでもらいたい!という気持ちが強くなりました。それからは、どんどん足使って、どんどんお客様に直接ポンちゃんを届けに行きました!」
今やSNSを駆使する人も多いなか“とにかく自分の足でお客様に会いに行く”という、自分に合った方法で「おひげのポン」ちゃんはどんどん愛され広がっていったようです。
「そして、アドバイスと言えるかはわかりませんが、あまり人の意見に一喜一憂せず、とにかく積極的に発信し続けることをもクリエイターとして大切なことだと感じています。
昔の僕は、コンペに落ちまくったり、売り込みでは断られたり、求めてないアドバイスをもらったりと、自分の作品はダメなのではないかと、すごく凹んでいた時期がありました…。
ですが、あるデザイナーさんに相談に行った時、
『この作品、本当に全員に見せましたか?この絵で売れないわけないと思うんだけどなぁ』と言って頂いたことがありました。衝撃でした。当時の僕は少ない人数にだけ作品を見せて凹んでいたことに気付き、この日以降よりイベント出展やSNSなど、とにかく人の目に触れる活動に力を入れて続けていきました。そのおかげで今では国内外でおひげのポンちゃんを愛してくれる沢山のお客様に出会うことができました。
自分が本当に良いと思った作品なら、それを愛してくれる方々に届くまで、信じて発信し続けることも大切なことだと学んだ経験でした。」
あとがき:
かなざわさんは、インタビューが始まる前にとてもやさしいトーンで「どんな方に向けた記事ですか?」と質問されました。ご自身の経験と知見を惜しみなく分けてくださる素敵な方なんだ、と始まる前から感動しました。
ー進む時ー その瞬間に詰め込まれた想いをお聞きし、かなざわさんのお話から「好き」の大切さを教えていただきました。「好き」はたのしい未来へと育つ種になり、人それぞれの尊い能力であること。自分だけでなく、周りの人の笑顔にもつながるパワーがあるということ。
そして、好きな道へ進むときに最初に持つべきものは「覚悟」。重たいようで、実際は重力がなくそれでいて頼りになる、心に添える持ち物を教えていただきました。
やれるよ、大丈夫、ずっとそう伝えてくださっているようなインタビューでした。
第二話は、無名の状態から世界で愛される「おひげのポン」ちゃんになるまで、大切に守りぬいてきたことをお話いただきます。
Written by : EandY
Photo by : junjun
※この記事の内容は公開当時の情報に基づいています。現在の情報とは異なる場合がありますのでご了承ください。

