クリエイターさんにお会いし、 その経験や想いをキリトリ「つくる」ヒントをいただくインタビューコンテンツ。ゲストは、とてもチャーミングな犬をモチーフにしたお菓子や雑貨を制作されているMaison terrier 横尾かなさんです。第一話では、クリエイターになるきっかけについてお話を伺いました。
<横尾かな さん>
東京都出身。都立工芸高校インテリア科を卒業後、武蔵野美術大学 工芸工業デザイン学科でテキスタイルを学ぶ。卒業後はアパレルショップでの接客や、東京・国立の人気菓子店「foodmood」にて広報として勤務。その後、犬をモチーフにしたお菓子やグッズをつくるアトリエ【Maison terrier】をスタート。書籍『My Little Dogs – Maison terrierのちいさないぬたち』を出版し、オンラインショップや百貨店、ギャラリーでのポップアップイベントなどで作品を展開。

ものづくり(犬モチーフのお菓子)を始めたきっかけは何でしたか?
「もともと幼少期からものづくりが好きで、その中のひとつがお菓子作りでした。美術大学卒業後はアパレルに就職して販売スタッフとなり、時間があるときに家でできるものづくりがお菓子作りだったので、息抜きのために再開しました。」
にこにこ笑顔でそう話される横尾さん。もれなく、スタッフも全員にこにこ笑顔に。和やかな雰囲気でインタビューがはじまりました。

「犬モチーフのお菓子作りのきっかけは、運命的な出会いがあったんです。それは、ずっと前からかわいい!と気になっていた西荻窪の老舗の洋菓子屋さん『こけし屋』のチョコレートケーキ。 社会人1年目の誕生日に、お母さんが予約してくれてやっと食べられたんです。
そのチョコレートケーキの上に、バタークリームでできている犬がのっていて、それがとってもかわいくて、衝撃的でした! どうにかして、このかわいい犬の形を保たせられないかなと思い、その時『メレンゲでならできそう』と考えたのが一番最初のきっかけでした。」
今の横尾さんの作品の原点は、溶けてしまうかわいいバタークリームの犬をどうにかして保ちたい!という、ひとつのトキメキから生まれたそう。

活動が広がるまで、どんなきっかけや流れがあったのでしょうか?
「最初は、つくったお菓子をお友達にあげたり、インスタに投稿するくらいだったのですが、少しずつ友達の友達や、インスタで見つけてくださった方がフォローしてくださり、楽しみにしてくれる方が増えていったんです。
そこで、作ったお菓子をもっと見てもらえるように個展をひらきたいなと思ったのが、最初でした。
ただ、まだ食品営業許可がなく、お菓子を販売することはできなかったので”見てもらうだけの個展”という今思えば少し変わった個展が最初でした(笑)。」
かわいいお菓子を作品として並べて、食べたくても食べちゃいけない、見てもらう個展!からスタートした横尾さん。
「私は、お菓子を”作る”ことが好きなんです。作ったお菓子をかわいい〜と思いながら眺めて、両親や友達へプレゼント。その時に『かわいい〜!』と言いながら笑顔になってくれることがうれしくって。だからなのか“お菓子を展示する“ということに違和感はなかったのですが、今考えるとちょっと意味わからないですよね(笑)。

お菓子を見てたら買って食べたくなっちゃうと思うんです。なので、初めての個展では『すみません、これ売れなくて〜』と何度も言っていました。その代わりにと、かわいいお菓子をカメラで撮って、その写真を使ってシールや、ポストカード、写真集にして販売したのが、グッズ制作のスタートでした。SUZURIでグッズをつくりはじめたのも、ちょうどこの頃です。」

”今”できることを”まず”やってみる。そして、自身から生まれる好きという気持ちと、お客さまを想う気持ち、どちらも丁寧にすくって大事に向き合う。多くの人が、彼女と彼女の作品に惹かれるわけがわかったように思います。
「わたし自身、実はお菓子をあまり食べなくて。」
そうなんですかー!と、スタッフ一同またもびっくり。
「よろこんでくれる笑顔が見れる。そのことが、大好きなんです。
お菓子作りをお仕事にする気はぜんぜんなかったのですが、みなさんが楽しいかな?と思いながらつくり続けていたら、書籍化などのお声をかけていただいて。2023年に独立することにしたんです。ほんと、最近のことなんです!」
そう笑って話される横尾さん。和やかで軽やかに話される内容には、驚きや、おもしろい話もひそんでいる。かわいくてやわらかい雰囲気なのにちょっとクスッとできて笑顔を誘う、横尾さんが作るお菓子みたい!そう感じるインタビューでした。

あとがき:
横尾さんは「かわいい!」と思う気持ちを、丁寧に、そしてとても楽しそうに受け取っているように見えました。そして、トキメキがヒラメキへ昇華するとき、肩の力がほどよく抜けている。見習いたい軽やかさをお持ちでした。
何か選ぶときに「できないかも」「むずかしいかも」といった道もついつい想像してこわばってしまいますが、トキメク方へまっすぐ、気持ちの寄り道をせずに、まずはやってみる。
そこに、自分だから見える景色が広がりだす。
トキメキという衝動はもしかすると、その人の才能をくすぐっているのかも?
その人らしい笑顔と未来へ、誘っているのかもしれません。
第二話では、『つづくコツ』についてお話を伺います。
Written by : EandY
Photo by : junjun